・*:..。o○君の歌声○o。..:*・

傲慢と無垢故の自意識過剰、 それもまた愛すべき 暴君 、

君は嘘だったのかもしれない

夜中は良くないな、
良いことが考え付く気がしない。


ないとさまが居なくなって
どれだけ経つんだっけ。
お母様にも連絡しづらくなってしまった。
今年の贈り物は、もう開けてあるだろうか。
来年もまた、何か送ってしまうんだろうか。

もし、このまま順調に
ゆえくんとの付き合いが続いて
運良く結婚することが出来たなら
その知らせをきみに送るだろうか。
そのときもまだ、
きみは帰ってきては居ないんだろうか。


脳が脈を打つ。

ふと、きみのことを考えては
元々存在しなかったんじゃないか、って
たまに疑ってしまうことがあるよ。

月日が流れて、温度を忘れてしまったからか
声も姿も、もう微かにしか覚えていないからか。


きみがあんまりにも上手に
消えてしまったから、
私の記憶が間違っているかのように。

きみは私の頭の中からも
消えようとするの?


生きているんだろうか、
もう死んでしまっただろうか。
最期は誰に看取られたのだろうか。
誰にきみの永遠を奪われたんだろうか。


エーテルに、なったんだろうか
本当に
空にのぼってしまったんだろうか。


きみは、私の目の前で
本当に生きていたんだっけ。

確かに暖かかったはずのきみの手を
何度も何度も思い描く。

意地悪に端を上げて笑う唇や
垂れている癖にきつく睨むような眼や
煙草を何度も押し付けて作った痕が見える手や

思い出すことはできるのに、
もう触れることはできないんだろうな。


きみが私を選ばなかった。
その理由は聞きたくない。

俗世に融けていく私を
どうか赦して。


=遊兎=